Jリーグ1stステージ:鹿島アントラーズ×横浜Fマリノス(国立)(00/04/01)
前半は、ボールを保持する横浜とカウンターを狙う鹿島という状態。ボールは保持するものの、攻め手がなかなか見出せない横浜に対して、鹿島がサイドを効果的に使いながらカウンターをしかけていく。前半、柳沢の浮き玉にベベットが反応して、ついにJ初ゴールで先制。後半は前半の流れそのまま、ベベットに変わった平瀬がゴールを決めるもオフサイド。その後、横浜が中村のCKからユがヘディングで決めて同点にするが、直後、抜け出そうとした柳沢を波戸がペナルティエリア内で倒してしまい、PK一発レッド。これをビスマルクが決めて突き放す。これで横浜は流れを失ったか、と思われたところで、名良橋がこの日2枚目のイエローで退場。10対10になったところで横浜が反撃を開始。ドリブルで切れ込んできた永井のパスを外池がポストプレーで落とし、直接中村が蹴りこんで同点。さらにロスタイム、永井のドリブル突破からペナルティエリア内でボールを受けた中村が、DFを交わして中にセンタリング。それをユが押し込んで同点。鹿島は増田を投入するが、そのまま横浜が逃げ切り。
翌日の新聞を見ると、「俊輔、将軍だ!」とかとにかく俊輔、俊輔のオンパレード。確かに、数字上1得点2アシストは確かにすごい。すごいけど、お話にならなかった横浜の状況を打開したのは、俊輔ではなく、後半から投入された永井だと思います。
これは前半の横浜がなぜお話にならなかったのか、の問題につながるのですが、前半の横浜はパッと見るにつけ非常にボール所有率は高いように見えました。しかし、実際にはボールを支配している、という感じではなく、ボールを持っているだけ、という感じでした。「持たされている」風ではなかったのは、鹿島のチーム状態も良くないということで、プレスこそ決まるものの、そこからの展開がいまいちなっていません。どの道、簡単に横浜にボールを奪い返されてしまうのです。ただ、横浜のダメさ加減に対して、鹿島はうまく抜ければ、ゴール付近まできっちり持っていって、シュートを撃てそうな雰囲気をもっていました。そこが横浜との決定的な違いで、攻め手が無く、ボールをこねくり回すだけの横浜とは違い、サイドを使う展開、前にボールを運ぶ意識という点で、ちゃんとした意思の疎通というものを鹿島の方が持っていたということです。これが、じょじょに横浜のDFラインを押し込み、先制点を生み出すポイントとなったわけです。
横浜の攻め手の無さに、「もう、セットプレーねらいに行って、俊輔に蹴らせろ」とか本気で考えたくらいです。このような状況はで、俊輔は確かに精度の高いプレーをすることができますが、俊輔にゲームを組み立てさせ、ペナルティエリア付近でしかけさせ、フィニッシュまで期待するというのは酷な事です。とにかく、チームとして、この3つの攻め手がまったく機能していないのです。結局、序盤は俊輔の頭を超えてボールが前線に放り込まれ、それが跳ね返されて終わってしまい、そのうち俊輔がボールがほしくて後ろの方に下がってきてボールを受け取るものの、結局出し手が俊輔になっただけで状況が変わらない、という事になってしまっていました。ここで打開をするために、サイドチェンジをするなり、インターセプトからの速攻を早くするなり手をうつべきなのですが、サイドチェンジもタイミングが一歩遅く簡単につめられてしまい、速攻のチャンスも全体的に動き出しが遅く、簡単に相手に戻られてしまいました。
ここで、状況打開のアクセントになったのが、後半出場の永井のプレーです。永井は俊輔とポジションチェンジを繰り返す形で、永井が右サイドに入ったら、俊輔が中央、俊輔が左サイドに入ったら永井が中央という形になりました。ここで、さらに鹿島が一人退場者を出し、DFが3バック気味になったのもポイントです。右サイドに若干のスペースが空いたことで、そこに入った永井に簡単にボールが入るようになり、ボールを受け取った永井も、遅攻の原因になっていた後ろに落とすことをせずに、即ドリブルで中央に切れこみ、常にポスト役となるユ、外池とのワンツーを狙いつづけたわけです。このように、「個人で仕掛ける」ということが横浜に流れを引き込んだわけです。もともと、永井、三浦、俊輔と質の高いMFが揃っているわけで、個の力でも十分鹿島の選手相手に勝負になったわけです。特にこの試合では、永井が早く仕掛けることで、鹿島の守備陣が混乱をし始め、かつ、永井がはじめの起点になることで、俊輔がより、ゴールに近い位置でボールを受け取ることができたわけです。2点目、3点目とも、結局は永井がドリブルで仕掛け始めたところから始まっている攻撃です。
こんな感じで、マン・オブ・ザ・マッチは永井に上げたいですね。後は、鹿島FW陣に、フィジカルでまったくよせつけなかった松田かな。